大阪高等裁判所 昭和25年(う)2524号 判決
弁護人は原判決は被告人及び弁護人のなした正当防衞の主張に対する判断を遺脱した違法があると主張し原判決を調査するに所論の通り特にその主張を掲げて之が判断を示した事実はない。しかしながら刑事訴訟法第三百三十五条第二項に該当する被告人等の主張に対する判断を判示する方法は必ずしも常にその主張事実を掲げてこれに対し直接判断を示す方法を採ることを要するものではなく、その主張事実に関し却つて反対の事実を認定して間接に主張否認の判断を示す方法を採ることも差支えない。
原判決の確定するところによれば被告人等は些細の事から喧嘩口論となりその末激昂の余り双方乱闘をなし本件傷害に及んだというのである。
いわゆる喧嘩を為す闘争者の闘争行為は互に相手方に対し同時に攻撃及び防禦を為す性質を有するものであつて、其の一方の行為のみを不正侵害なりとし他の一方の行為のみを防禦の為めにするものと解すべきものではない。喧嘩の際における闘争者双方の行為については刑法第三十六条の正当防衞の観念を容れる余地がない。
従つて原判決が被告人等の本件行為を喧嘩による乱闘であると認定した以上所論正当防衞を間接に排斥していることが明瞭である。それ故に仮りに刑事訴訟法三百三十五条第二項の主張は特に之を示して判断したことが判決に明示されなければならないとしても、判決理由自体において正当防衞の不成立が明示されているからかかる判断遺脱は判決に影響を及ぼさないことも明瞭である。論旨は採用できない。